たまひの蝸牛…

クラシックの演奏の感想中心に記載しています。良い悪いではなく好き嫌いでの評価ですので参考にならなかったらすみません

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蓄音機ネタ:針について(10面再生可能針を買ってみた)

仕事関係がとても忙しくて、忙殺されておりました。
日々癒し?で蓄音機を聴いているので、その後のネタを、今回は針についてです。

蓄音機の針

蓄音機の針は、サウンドボックスのカンチレバーの端に付けて、spレコードの溝に落としトレースする目的で使う物になります。

針が溝をトレースする事で、振動がカンチレバーを経由してテコの原理で振動を増幅し振動板に伝わる事で音に変換。
変換後の音は アーム → ホーン を通って増幅されて聴こえるようになります。

LPレコードプレーヤーだと、カートリッジに付けられた針と同じ役割ですね。

蓄音機は、音が出る工程が恐ろしくシンプルなのでとても重要なパーツになります。

蓄音機の針
①エクストラソフト、②ラウド、③10回針、④竹針

蓄音機の音量調整

蓄音機の針の説明の前に、蓄音機の音量調整について。
蓄音機は全て電気を使わずに機械のみで動いています。その為、通常のレコードプレーヤーのような音量調整のノブはありません。

そんな蓄音機の音量をどうやって調整するかですが以下の方法があります。

  • 物理的にホーン開口部を塞ぐ
    蓄音機の音の出る部分を物理的に塞いだり狭めたりする事で音量の調整が可能です。

    大きなキャビネットタイプの蓄音機だと、開口部に扉やルーバーがついてる事が多いので、それで音量の調整します。
    ポータブルタイプは、開口部に扉などはないので、タオル等を丸めて入れる事で音量を小さくすることができます。
大きな声を出している子どもの口を手で塞ぐと音が小さくなるのと同じですねw
  • 針の長さを変える
    針の長さを変えることでも音量の調整が可能です。
    サウンドボックスはテコの原理でSPレコードの溝の振動を大きくしているので、針の長さが長くなると、力点が遠くなるので、作用点の動きが小さくなり結果音が小さくなります。
    これは全周波数で音が増減するとのことです。
  • 針の太さを変える
    針の太さ(軟らかさ)を変更する事でも音量の調整が可能です。これは振動を伝えている関係上、針の太さが細くなると、高音の振動が伝わりにくくなる事で感覚的な音量を下げる効果があるようです。
    感覚的と記載したのは、音量が下がるのが主に高音のみで低音部はあまり変化がない為。
同じ音量だと、高音の方がよりうるさく感じられるようです。高音が下がるので、スクラッチノイズも下がって聴きやすくなります。

種類

蓄音機の針は主だったものでは下記があるようです。

鉄針

鉄で作成された針で、太さによって、ラウド、ミディアム、ソフト、エクストラソフトと色々と種類があります。

針の種類 太さ
ラウド φ1.4mm前後
ミディアム φ1.1mm前後
ソフト φ0.9mm前後
エクストラソフト φ0.8mm前後

下記では、ソフト、ミディアム、ラウド、スピアポイントを扱われていて、入手も可能です。

針の途中から槍先の様に扁平になった、スピアポイント(ハート)針と呼ばれる針もあります。これはラウドとミディアムの中間の音量の様ですが、向きを変える事で音量(音質)が変えられるそうです。

通常鉄針は、1面再生したら捨てて新しい針に交換する必要があります。これはSPの硬い盤面で鉄の針が削られてしまい、そのまま使うと今後はSPを削ってしまう為とのこと。

なので、交響曲等の長い曲の場合は、針だけで10本以上消費しちゃったりします。
竹針

竹を三角柱状に削り、先端を斜めに切った状態の物。三角形の頂点でSPレコードの溝をトレースします。
その他の針と比較して、軟らかい為、高音が一番小さく感覚的な音量が小さい様です。*1

クラッチノイズも一番小さいと言われています。独特の軟らかい印象の音が出ますが、余計な音も多く出る様で、音像が大きくぼやける印象です。

竹針、SP1面再生毎に変更の必要はないですが、先が鈍ってきたら専用のハサミで切って鋭くする事で繰り返し使えます。

www.gramophone.jp

ある意味サスティナブルですが、針が短くなるに従い、音量が大きくなり高音も出る様になってきます
サボテン針(未試聴)

柱サボテンの針を加工して作られた針、原料として使われていたサボテンが絶滅危惧種となった事で、流通量が極端に少なくかつ値段も結構します。

竹針と同じ傾向の音の様ですが、竹より硬いのでパンチのある音とのこと。
これも針先が鈍ったらヤスリで削って尖らせる事で繰り返し使用可能

ソーン針はこちらが手に入りやすくておすすめ

専用のヤスリも売っていました。

その他

その他、ガラスや陶器、鯨の歯、鹿の角、等など色々な材料で針が作られていたようですが、簡単には手に入らないので未試聴。

蓄音機の針の悩み

針の消費が激しいor交換が大変

蓄音機の針は、基本1面で交換するかカッターで切る必要があります。SPが複数枚組になった曲は1面終わる度に、仮を交換してゼンマイ巻いてをしなくてはならずちょっと大変。
竹針だと、交換は不要ですが、毎回カットする事になるので一度針を外してカットして元に戻す必要があります。

音量調整

音量調整も、竹針だと段々短くなって次第に音量がアップしてしまったり、品質によって音量も音質もバラバラで一定でないのが不満。
鉄針だと、同じ太さでも針の長さを調整する事で音量が若干調整できるし、長さが一定なので使いやすく感じています。
鉄だと品質も安定しているので、コントロールしやすいです。

手持ちのラウド針だとうるさくて、エクストラソフトだと音が若干小さく感じる時もあり、ミディアムが欲しくなってきましたが、交換頻度考えると…と悩んでました。

10面再生可能な針を買ってみた

鉄針のデメリットの1面毎に交換を解消している、10面再生可能な針、今だに日本製で手に入る製品があるので、買ってみました。

JICOの蓄音機針

購入したのはレコード針等を作っているメーカーJICOの蓄音機針です。
新品で製作されていて入手可能な針で非常にありがたいです。
180本入っていて、10面再生できるので、通常の鉄針1800本分使える計算になりますね。

レビュー

蓄音機針
①エクストラソフト、②ラウド、③JICO針、④竹針

太さ的には、ラウド針の1.4mmとほぼ同じ直径で長さもほぼ同じ。
JICOの針の方が針先への傾斜が緩やかな分、ラウドの針より音が小さくなる様に見えますね。
針先もJICOの方が鋭い感じです。

音量と音質

使った感想ですが、音量に関しては想像通り、ラウドより小さくソフトに近い感覚の音量で、マンションで夜聴くにはちょうど良い音量に感じました。
前述の様に、針の長さでも音量調整できるので深く挿して短めに使えば音量アップ、浅く挿して長めにして使えば音量ダウンと微調整できそうです。

音質は、軟らかい音という評価がありましたが、ダイナミックレンジが高く小さい音(ホールトーン等)もよく再生され、音像も小さいので、軟らかく感じるのかな?と思います。
オーケストラ物だと手持ちの鉄針と比べてかなり印象変わり、とても聞きやすい音になります。

これはかなり良い音…個人的にはとても好みな音です。

回数

8面〜10面再生可能との事ですので、12吋なら8面、10吋なら10面と思います。
とりあえず、12吋5面、10吋1面再生した感じでは、音質に変化なく、問題なく聞けます。
マージンとって、12吋なら6面、10吋なら7〜8面程度で様子みようかな?と思います。

まとめ

JICOの針、買って非常に満足しました。
音量も丁度よくて音質も良く、これとソフトの針があれば、私の使い方ではカバーできそうです。
組み物のSP聴くのは非常に楽になりました!

楽になったとはいえ、3枚までかな?ベトベンの第9とかマーラー、オペラをSPで聴く気にはならないなぁ〜

*1:様ですと記載したのは、自分の蓄音機では、鉄針のエクストラソフトより竹針の方が音量が大きい為